撮影の舞台裏
2018/09/27
お知らせ
今年の夏に嬉しいお仕事のご依頼をいただきました。
それは私が仕事用カメラとして常用しているFUJIFILMの広告です。
今回は「日本カメラ」、「アサヒカメラ」、「月刊カメラマン」と3誌同時掲載で、いつも使っているレンズのストーリーとそれを使って撮った写真を提供するというものでした。
自分が愛する機材の広告に起用していただけるなんて、本当に光栄なことで、しかも歴史ある写真業界を代表するメジャー雑誌にいっきに載るなんてこれはえいらいことだし、自分もそういうことができるようになったかと感無量でした。
ちなみに月刊カメラマンは1978年生まれで同級生でした。アサヒカメラは1926年、日本カメラは1950年の創刊。
使うカメラは中判サイズといって、いま各社新製品を出して話題になっているフルサイズと呼ばれるセンサーの大きさをさらに上回るもので、撮影で得られる画像の階調の美しさを私は気にいっていて、今回はこのGFX50Sを使用した記事にさせてもらいました。Nikon、Canon、Panasonicと3社が新しいフルサイズを出すよそで、さりげなくGFXシリーズはGFX50Rという新しいカメラを出しており、これまで大変高額だったこのサイズのカメラのお値段をぐっと下げて、手が届きやすいものにしてくれました。個人的には動き物をバンバン撮らないのであれば、フルサイズミラーレスへ移行するより、中判の世界の方も考えてもいいのでは?と思っています。私もこれまでずっとフルサイズの一眼レフを使っていたのですが、この中判を使ってからは 写真を撮った時の浮かび上がるようなディテールに魅せられてしまい、いまではメインはこれと決めています。
そして、今回の広告で紹介するレンズは左のフジノンレンズ GF120mmF4 R LM OIS WR Macro。
中望遠のマクロレンズ。お料理の撮影では欠かすことのできない一本です。
中判はボディーサイズが大きくなるのとともにレンズも大きくなりますが、このレンズはその大きさに比例しない軽さがあり、撮影は手持ちでも楽です。
撮影については、こちらからのリクエストで撮り下ろしにさせていただいたのですが、世に出して恥ずかしくないようなクオリティーの料理を私が作れるわけではないので、ここはプロに是非ということで、ご近所でもあり、いつも頼りにしているパティスリーアブルームの朝倉雅文シェフにオリジナルのケーキを作っていただくようにお願いをしに行きました。なんでそもそもモチーフが料理かというのは、仕事柄料理撮影の機会が多く、料理写真教室もやっているし、料理写真のノウハウ本も出しているので、私に声をかけてくださるというのは、「料理の写真で」ということなのです。
実はアブルームさんのケーキには大変お世話になっており、フェリカスピコのテキストでも使っている「もっとおいしく撮れる!お料理写真10のコツ」や「おいしいかわいい料理写真の撮り方」でも度々登場していただいています。そして、その撮影の都度、大変な協力をしていただき、撮影の時間を聞いてその時に最高の状態になるように調整をしていただいています。
でも朝倉シェフ。そんな気軽に頼める方ではなく、石神井公園にいまのお店を構える前にはパークハイアット東京を経て、ザ・ペニンシュラ東京のスーシェフをされていました。2011年に私も石神井公園に住み始めたのですが、ちょうどその年にお店をオープンされて、当時私は経歴も全く知らなかったのですが、朝倉シェフの作るケーキを食べて、何層にもなっている甘みの深さに感動し、すごいパティスリーが近所にできたぞと家族で驚いていました。
しかし、歳が近いこともあり、図々しくもとても仲よくさせていただいております。何かあると相談させていただいており、今回についても、その広告用の写真を撮るためのケーキを作っていただきたく、ただ、まったくのオリジナルでお願いしてしまいました。
今回はレンズの広告なので、伝えたかったのはその解像度でした。
色をしっかり捉えて、こまかなディテールも隅々まで再現できるという意味の写真にしたかった。
でも、色とりどりに複雑な色味の写真にしていくのは割とありがちで少し安易かなと、ならば逆に同じような色であえて攻めて、その中でも違いをしっかり表現できて、なおかつ細かな質感も写し出せればと、リクエストはチョコレート縛りでお願いしました。
皿もチョコ。土台もチョコ。細工もチョコ。上に乗せる飾りにいたっては、ご好意で2パターン作っていただきました。お忙しいのにこんな大変なことをお願いしてしまいましたが、作る側にとってみると共同作業で男としての勝負といったところでしょうか。せっかく快くおひき受けいただいたのですから、こちらも本気で挑まないと失礼にあたります。朝倉さんのつくるケーキには同じ素材なのに色々な顔があり、そして撮り手の私はレンズだけではなく、光の使い方でもその立体感や表情を伝えられればと現場では緊張しながら撮影していました。
日本カメラの隣の記事が今回の広告です。もとの写真については、広告のため、こちらのブログには掲載できないので、是非本屋さんなどで実物を見ていただきたいのですが掲載は2018年10月号のアサヒカメラ(p88)、日本カメラ(p13)、月刊カメラマン(p58)になります。
撮影中は緊張感がありつつ実は和気あいあいとしていて、一枚一枚撮るたびに「これもいい、あれもいい」と話し合っていました。光はお店が閉店してからの21時からだったのでストロボ2灯を使っています。
今回は本当によい経験をさせていただきました。お声がけいただいた富士フイルムイメージングシステムズ様とご協力いただいたパティスリーアブルームの朝倉雅文シェフに感謝いたします。
About Us
日本大学芸術学部卒業後、2003年に独立。広告、書籍、雑誌、web、などで撮影活動中。2011年に、フードフォト専門の写真教室「フェリカスピコ」を設立し、約4000人の受講者がいる。Apple Store表参道、渋谷ヒカリエのイベント内でのレッスンも。「マツコ&有吉の怒り新党」(テレビ朝日)、「Rの法則」(NHK)などメディア出演も多数。 > 料理専門の写真教室 フェリカスピコ