ライトスタンドについて
2018/05/31
技術
料理写真教室フェリカスピコです。
今日はライトスタンドについて書きます。
教室でも自然光で撮影する基礎教室以外に応用編として照明を使ったライティング教室を定期的に開催しておりますが、そもそもライトを立ててテーブルの上に光を照らすためにはライトの高さを調節するためのライトスタンドが必要になります。topの写真は当社にあるものを並べてみたものです。メーカーや、サイズ、使い勝手などそれぞれが異なり、ざっと並べただけでも14本。1つの種類で複数持っているものもあるので、数えれば20本以上を所持しており、それらを用途によって使い分けています。
これらは形状や重さなど様々な違いがあり、教室でもこれを説明して、間違えた買い物をしていただかないようにするために一苦労しています。上の写真のものはマンフロットのスタンド、だいぶ古いものになりますが、サイズも重さも程よく、ごく一般的な撮影には向いています。高さは2.3mくらい伸びて、テーブルの料理を撮るには十分すぎるくらいのものです。現行のマンフロットのスタンドはもう少し格好よいのですが、スタンド同士をスタッキングできるなど、使う側のことを考えた工夫が施されています。
これは、より大きいものです。高さでいうと測ったら3,9mまで伸びました。普段使いには大きすぎるもので、私は背景紙やトレーシングペーパーを垂らすのに、これを2本使います。マンフロット社のものではないものも所持していますが、それを含めると4本持っています。料理より規模の大きい人物撮影などには結構重宝するんです。昔カメラマンのアシスタントをしていた会社ではこれを「バケマン」と呼んでいて、聞けば「おばけマンフロット」の略らしく、私もそのあだ名を気に入ってよく使っていました。他では通用しない呼び名でしょうけど・・。写真のものは、その先輩カメラマンが引退される時に譲っていただいたものです。
そして、最初に紹介したスタンダードなタイプのものには、少し違う形のものがあったりもします。左のものは少し脚が細いのがわかりますでしょうか。その分軽量に出来ています。
こんな感じです。太い方は中が空洞になっている円柱型になっていますが、細い方は脚が平らです。主には取材撮影など機材をできるだけ軽くしたい時によく使っています。スタンドを外に持って行くときは、ゴルフバックにも似た専用のケースに入れていきますが、スタンドだけではなく、三脚や予備のスタンド、それからストロボも一緒に入れてしまうので結構な重量になります。そのとき少しでも軽いと体力的には楽なので長丁場の取材ではよく採用しています。
違いは脚の太さだけではありません。スタンドのたたみ方もことなり、右が通常のものですが、それとは逆に脚を折るように開閉します。その分、長さもことなり細い方が全体が短くなるので、これまたしまう時にコンパクトでより取材向きでもあります。安定感でいうと太い方がよいでしょうね。各社同じようなものはありますが、マンフロットではナノポールと呼んでいます。他では、ウルトラコンパクトとか、ジュニアスタンドなんて名前を使っているようです。
これは最近購入してみたもの。ストロボを作る日本のメーカー、Nissinが作った LS-50Cというタイプのものです。これが今バカ売れらしく、正直スタンドが売れているなんていうのを聞くのは初めてで、普通は重くて安定感があるのを求めていくのですが、逆にめっちゃ軽くなっています。
正直軽すぎてこんなのあり?と思っていたのですが、先日出張が続いていて、体も心もボロボロになっていた時に「あれアリかも」と出張先の大阪のカメラ店で買ってみました。写真では人差し指と親指で摘んでいますが、小指でもいけそうなくらい軽いです。ちょっと不安な面はありましたが、使ってみると以外にいける。小型のクリップオンストロボであれば問題なしです。ただ、価格は素材にカーボンを使っているからか普通のスタンドの倍くらいになります。どこで売れているのよと機材店に聞くとコスプレ撮影をする人には絶大な人気があるということでした。そもそも衣装が重くかさばるので、撮影する機材はできるだけコンパクトに軽量にしていきたいという思いから購入するということでしょうが、なるほどニッチをついた素晴らしいお商売です。
全体の重さや、形だけでなく、スタンドは実は先端の形状が違うものもあります。左の2本は先端が凹んでいてこれをメスダボと呼び、右の一本は飛び出ていてオスダボと呼びます。たぶん動物の生殖器に例えて言っているのでしょうが、参加者のほとんどが女性の我が教室ではなかなか言いづらいところがあり、教室では「出っ張っている方」「へこんでいる方」と本当の総称は言わないでいます(笑)。やめてくれないかなこの呼び名と思うのですが、それはさておき、実はライトを選ぶのと同時にここは真剣に考えておかねばならず、日本製の照明はオスダボがついており、スタンド側はメスでないとつかないのです。逆に海外の照明はメスダボがついており、出っ張っているオスダボでないとつきません。ですので、買い物をする際に、オスオスだとライトがつかずにショックを受けることになります。日本だけガラパゴスなんて言われてもいますが、元々は日本もスタンドはオスだったらしく、ある照明機材メーカーの社長さん曰く、昔放送局などに機材をおろしていた企業が独占を図ろうと、先端の形状を逆にしたのがきっかけらしく、その企業はなくなり、その名残だけがいまだに残っているのだという話でした。スタンドのトレビアはともかく、アマゾンなどにはなかなかそういう記載がないので、購入する時にはよくよく注意してくださいねと教室では呼びかけています。ちなみに先ほどのNissinの青いスタンドは、海外の照明をつけるユーザーが多いのか、日本のメーカーにもかかわらず、先端はオスダボになっています。話は長くなりますが、もう一ついうと、マンフロットはイタリアのメーカーですが、日本で売られているものは先端をメスからオスへ変換しており、品番を見るとJapanの「J」の字が入っております。これも家電量販店ではメスダボになっていますが、Amazonなど海外からくるものをみるとメスもオスも入り混じっていて仕様にも書いていないこともあるので、本当に注意してください。
これもさっきのバケマンと一緒にアシスタント時代の先輩から譲り受けた、いまはもう会社はありませんが龍電社(RDS)のスタンド。最近使う機会も減ってきていますが、Nissinの劇軽のスタンドとは逆にとっても重くて安定しています。しかも下のキャスターで自由に移動ができるので、真上からの撮影時や、パソコン台をくっつけてPCが移動できるようにしていたこともあります。昔のものらしく、すごくしっかりした作りでベアリングがよいのでしょう、なんにもメンテしていませんがタイヤの動きがとってもスムーズです。このブログのために久しぶりに取り出してきたけどもっと使ってやりたいなと思いました。
たたむときはナノポールのように折るようにしまいますが、脚自体が重くてうっかり指でも挟めば、ちぎれるほど痛いと思います。アシスタントの時には、「本当に注意するんだぞ」といい聞かされました。ちなみに、体重計で測ったら6kgありました。使い方を間違えれば凶器ですね。。
これは横にブームと呼ばれるバーがある、スタンドです。トップライトと言って、人物でもブツ撮りでも使いますが、真上から照明を当てるときに使用します。ただ、これだけでは軽くて、重い照明をつけると倒れてしまうので、もれなく重りをつけて使います。私は脚の部分に10kgの砂袋を噛ませて、さらにライトをつける部分とは反対のところに1kgの重りをつけて使っています。人物撮影のときはこれが頭の上に落ちてきたら一大事なのでかなり慎重に、ネジを力いっぱい閉めています。
このブーム付きのスタンドも、さきほど紹介したメスダボの一番左のものもそうでしたが、穴が横にもついているタイプのダボもあります。メスダボのスタンドを購入するときは、実はこれが便利で照明だけではなく、ここにホームセンターで買ってきた金属棒などをさせば竿のようにもなり、特別な機材を買わなくてもトレーシングペーパーや背景紙を垂らすことも可能です。
最後に紹介するのはこのスタンド。なんせ、私が一番使っているお気に入りのスタンドです。写真電気工業が手がける一脚スタンドというもので、価格もそれなり、重さも重いのですが、安定感は抜群であのスタンドの脚を開いた時の足をひっかける危なさがなく、室内で一日撮影という時は主にこれを使っています。
下の円盤状のものは取り外しが可能で移動時にはバラしています。写真でもわかる通り脚の広がり方が全然違い、一脚スタンドは幅が短いので場所をとりません。
普通のスタンドは脚を引っかければ倒れますし、危険がいっぱい。でもこれなら踏んづけたって倒れないし、撮影で疲れてくると足元もフラフラしますしねー。これなら安心です。以前は企業の社長室や役員室に行って会社案内のための人物撮影も行っておりましたが、お年をめした社長や会長の安全も考えると本当にこれは役に立ちました。いまではライトスタンドとしてももちろんですが、これを2本使ってブームをつけて、そこにカメラを設置し真上からの俯瞰撮影のためにも使っています。というのもスタンド自体に重量があるので、カメラを安定させるのにも向いているということに気がついたからです。
まあ、いろいろと言いましたが、ライティングの基本のライトスタンドといっても様々、私が所持するだけでもこれだけ種類があり、世の中には他にも色々あります。ライティングの教室ではもちろん全ては紹介しませんが、参加された方が間違いたお買い物をされないようにちゃんとこういったことも説明した上で、さらに上につける照明についても使い勝手や、どう撮れるのかを詳しく説明して参りますので、夜や地下など陽の入らないところでの撮影や、安定した光のもとでの撮影技術が必要な方がぜひいらしてくださいね。以上でした〜
About Us
日本大学芸術学部卒業後、2003年に独立。広告、書籍、雑誌、web、などで撮影活動中。2011年に、フードフォト専門の写真教室「フェリカスピコ」を設立し、約4000人の受講者がいる。Apple Store表参道、渋谷ヒカリエのイベント内でのレッスンも。「マツコ&有吉の怒り新党」(テレビ朝日)、「Rの法則」(NHK)などメディア出演も多数。 > 料理専門の写真教室 フェリカスピコ